『古筆』に骨董品としての価値はある?買取についても解説します

古筆(こひつ)とは、古代の平安時代から鎌倉時代にかけて書かれた優れた和様の書道を指します。古筆は単に”古い時代に書かれた文字”ではなく、名筆であることが前提となっています。名筆というのは、優れた筆跡や絵画のことです。古筆においての狭義の場合ですと、特に仮名書きであるものを指すこともあります。

 

古筆のうち、一般に知られているものですと、『万葉集』や『古今和歌集』などの歌集があります。こちらは掛け軸の形が多いです。作品によっては高価で買い取りをされることもあります。

 

今回、骨董品買取コラムでは、古筆について、その歴史、魅力、筆者、現代における買い取り、についてご紹介します。ぜひ最後までお読みください。

古筆とは?

古筆は、平安時代から鎌倉時代にかけて書かれた和様の書道のうち、名筆であるものを指します。名筆とは優れた筆跡や絵画のことを指し、単に”古い時代に書かれた文字”ではありません。古筆は、この平安時代から鎌倉時代にかけての時期には、貴族の贈答品でした。

当時の贈答の際は「万葉集」や「古今和歌集」などの巻物や冊子であり、完全な、まとまったものでした。

 

この古筆を、1紙あるいは1頁、さらには数行に切断分割されたものを「古筆切」(こひつぎれ)と呼びます。

 

古筆切は、1 巻・1 冊を 1 紙ごと、頁ごと、数行ごとに分割することにより、ひとりが独占していた鑑賞の楽しみをより多くの人が楽しむものに変えたのです。

 

 

古筆の魅力ってなに?

古筆の魅力は、書かれている歌の内容はもちろんのこと、何といっても流麗な筆跡と、文字の書かれている料紙(和紙)の美しさにあります。

 

平安文化の優雅な古筆を茶席に掛けることによって、茶席が雅やかな雰囲気に変わります。古筆は、同じ書であっても、僧によって墨で書かれた墨蹟とは、また違った印象を我々に与えます。

 

 

古筆の歴史

最初に古筆を茶席に取り入れたのは、1555年に室町時代後期の豪商、茶人の武野紹鴎が行ったのが最初と言われています。

その後、現在の、古筆切が用いられる茶席のスタイルになったのは、昭和初期の実業家でもあった益田鈍翁らが活躍した以降のことと言われています。

現代でも、古典文学に親しみを感じ、もしくは憧れを持つ人々の間では、茶席に掛けられる古筆はとても人気が高くなっています。

 

先に述べたように、古筆が茶掛(ちゃがけ・茶室に掛けられる掛物)として用いられたのは室町時代後期からです。しかし、一般化し多くの人に用いられるようになったのは、近代以降のことでした。そのため、掛物としての歴史はそれほど深くないと言えましょう。

 

ただ、茶席においての掛物について歴史が深くないとはいえ、古筆そのものには歴史があります。古筆のなかで多いのは、奈良時代の「万葉集」、平安時代の「古今和歌集」、「和漢朗詠集」です。また、そのほかにも「拾遺和歌集」や「和泉式部集」など平安時代から鎌倉時代に書かれた歌集があります。

そしてこれらの歌集は巻子などから切り分けられ、多くの方に鑑賞されるよう古筆切として珍重され、存在してきたのです。

 

有名な古筆切には、○○切と名前がついているものがあります。

 

例えば、「寸松庵色紙」や「光悦切」などの所蔵者の名前から付けられたもの。「石山切」や「伊予切」など所蔵されていた土地由来のもの。他にも、「昭和切」や「戊辰切」といった分断、表装された時代や干支から付けられたものなど様々なものがあります。

 

 

古筆の筆者

古筆を書いた人、つまり筆者については、近年研究が進んでいます。それにより、かなりの作品が筆者を特定できるようになってきました。しかし、それでも「伝○○」と古来より言い伝えられているもので筆者を類推しているものが未だに多くあります。

 

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

古筆が多く書かれた平安時代から鎌倉時代は、万葉仮名からひらがな、そして個性ある書体へと変遷の見られる時代です。優れた能筆家と歌集が数多く存在していた時代であったからこそ、筆者を特定することは難しいのです。

 

著名な能筆家として挙げられるのは、小野道風や紀貫之、藤原俊成などです。

 

古筆の価値と買取り

古筆の価値は、以下によって決まってきます。それは、古筆自体が著名なものであるか、筆者が著名な人物であるか、またそれに加えて書風が優れているか、この三点が重要です。

また、書かれている和歌の内容も重要ですが、料紙や表具も大切なポイントになります。どのような紙や裂を用いているかで評価も上下します。

 

古筆の買取りについて、取り扱い業者を選ぶことは大変重要になります。

古筆はやきもの等に比べて、専門に取り扱っている業者の絶対的な数が少ないため、相対的に古筆について正しい評価ができうる業者も少ないといえるでしょう。古筆の買取を依頼する際には、その業者がどれだけの量の古筆を取り扱っているか、また経験豊富かどうか、慎重に調べる必要があります。